苦悩の淵に沈む人。
差別されてきた人。
虐げられてきた人。
誠実に生き抜く人。
こうした人々をこそ、全身全霊で励まし、生きる力を送り、最強の仏の境涯を開かせゆくのが法華経です。
日蓮仏法であります。
世界的な仏教研究者である、ロケッシュ・チャンドラ博士が語っておられました。
「釈尊は、人間を世界の中心に位置づけた、人類の精神の先駆者である」と。
あらゆる人間を最高に輝かせ強く賢くするのが、仏法の将軍学です。
庶民の心の中に飛び込んで、「ともに幸福になろう!」「ともに勝とう!」という渾身の励ましを送る。
そして、偏見や旧習の壁を打ち破って、民衆の栄光を勝ち開く。
これが「法華経の兵法」であります。
戸田先生 戸田先生に初めてお会いした62年前。私自身、戦争で兄を亡くし、家を焼かれ、病魔に侵されていました。
それまで信じていた価値観が崩れ去り、誰もが深い精神の闇に沈んでいた時代です。
先生は、19歳の私をご覧になり、暗雲に包まれた私の心を瞬時に変えてくださいました。
「一家のことを、一国のことを、さらに動乱の世界を考えた時、私は、この世から、一切の不幸と悲惨をなくしたい。
これを広宣流布という。どうだ、一緒にやるか!」 私の体中に電撃が走りました。
これほど明快に、人生と社会の正道を示してくださる指導者はいませんでした。
私は「この人ならついていける」と直感しました。いな、心から魅了されたのであります。
戸田先生は、希有の大師匠であられました。
また、本当に鋭い人間学の大家であられた。どんな人に会っても、たちまち相手の生命の奥底まで見抜かれるのが常でした。
先生は、まるで精密機械のように、その人の生命の癖を正確に喝破されたのです。
「歩き方、肩の怒らし方、また声で、その人がわかるものだ。ドアの開け方ひとつで、その人の悩みがわかるものだ」と、鋭く話されたこともあります。
特に、嘘やごまかしを言う人間には、本当に厳しかった。
「あの男の心には二心がある」「これは嘘だ」「この話は、うますぎる」と。
私は、その偉大な先生から、破邪顕正の将軍学を教わりました。
先生の「法華経の兵法」を、わが生命に徹底的に叩き込んでいただいたのであります。
一心不乱の祈りを謀を帷帳の中に回らし 勝つことを千里の外に決せし者なり 我らの信心の次元で言えば、「謀を帷帳の中に回らし」とは、同志が緻密に連携を取り合い、隙のないよう呼吸を合わせていくことです。
その根本は、真剣な祈りです。
大阪の戦いの間も、私は関西本部で、戸田先生が願主である「大法興隆所願成就」の御本尊に、深夜、一人で丑寅勤行を続けていました。
誰が知らなくとも、師匠のため、広宣流布のため、一心不乱に祈り抜き、祈り切ることです。
誰が見ていなくとも、大聖人が御照覧です。
自分自身の仏界が見ています。そこに、諸天善神が必ず動き始めるのです。
そして、「勝つことを千里の外に決せし者なり」とは、勇気と団結の行動です。
これほど心強い、絶対の兵法はありません。
御書は、大聖人が遺してくださった人類救済の「法華経の兵法」の指南書です。広宣流布と人生行路の一切の壁を突破しゆく「勝利の経典」であります。
御聖訓を心肝に染め、正しく行じていくならば、わが生涯も「まさかが実現」の大勝の劇で悔いなく勝ち誇っていけることは絶対に間違いない。
本抄を頂いた四条金吾が逆境をはね返し、勝利の実証を示したのも、師匠である大聖人の仰せ通りに「苦楽ともに思い合せて」題目を唱え抜いたからです。
そして聡明に身を律し、勇気で戦い切ったからにほかならない。師匠の深き一念に心を合わせて戦えば、勝でない戦などありません。
「創価の師弟に一生を賭けてごらん。
後悔は絶対にない。
勝利の笑顔で、この人生を必ず飾っていけるよ」戸田先生の大確信です。
私は、恩師から学んだ「法華経の兵法」で戦ってきました。
法華経の兵法は、通途の兵法と比較にならぬほど優れている。
いな、その根底においては、孫子の兵法なども、法華経の兵法から来ているのです。
善の力を組織化せよ
御書根本の団結 アメリカ公民権運動の指導者・キング博士の盟友で、米国のキング記念センターの初代所長を務められたハーディング博士が話されていました。
「希望とは、人間が、よりよき社会を築く可能性を持っていることへの確信です。
しかしそれは、一人の人間が単独でできるものではありません。
創造のための力を合わせていかねばなりません。
キングはいつも語っていました″善の力を組織化せよ″と」
「善の力を組織化」―─重大な視点です。その最大の力である、仏の大生命力を引き出し、結合し、連帯させゆく運動が、私たちの広宣流布です。「法華経の兵法」です。
友に励ましを送る学会の同志こそ、この兵法の偉大な実践者であられます。
私は、大阪の戦いで″妙法の善の力″を大拡大すべく、この法華経の将軍学をまっすぐに実行しました。
それこそ、一念に億劫の辛労を尽くす祈りと行動を貫き、人々の心を揺り動かし、一変させていった。
そこには、「悪鬼魔民をも味方にする」勢いがありました。
そして、関西中の庶民の心に「我らの力で社会を変えられる!」「必ず幸福の道を開いていける!」という勇気と希望の炎が燃え広がって、「まさかが実現」の金字塔が打ち立てられたのです。
大阪の戦いでは、ほとんどの友が入信まもない″新会員″でした。
戸田先生から勝利を託された若き闘将の私に、健気なる関西の同志は、ガッチリと心のギアを合わせてくれました。
御書根本──そこにおのずと「最高の団結」「最高の勇気」が生まれ、不可能を可能とする必勝のリズムができ上がったのです。
大聖人は『謀を帷帳の中に回らし勝つことを千里の外に決せし者なり』(御書183頁)との言葉を引かれています。
これは、中国の『史記』に記された名将・張良の故事です。
陣中にいながら、はるか千里の向こうにいる敵に勝つ作戦を立てる―─。これが戦乱の世を勝ち抜く王道とされてきました。
我らの兵法は「信心」です。
最高の祈り・作戦・行動、そして団結・勇気!
すべてを生かし、勝利の方向ヘダイナミックに回転させていく原動力が「法華経の兵法」なのです。
小樽問答、山口広布開拓、夕張炭労事件──戸田先生が今世の指揮を執られた最後の数年間、私は先生と二人であらゆる作戦を立て、一切を圧勝で飾りました。
常に先生と私、二人きりの語らいから、「千里の外に」勝利を決する創価の大進軍は始まったのです。
「法華経の兵法」は真剣勝負で相伝先んずれば人を制す この「法華経の兵法」は真剣勝負で戦わなければ相伝できません。
真剣勝負で師匠に続かなければ継承できない「広宣流布の相伝」であります。
若き日以来、私はすべての戦いを「先手必勝」「電光石火」の指揮で勝ってきました。
「先んずれば人を制す」──言葉は簡単ですが、勝敗を決する大事な一点です。
あの小樽問答の勝利を喜ばれて、戸田先生は言われました。
「敵が攻めかかってきたが、守勢に回らないで、攻勢に転じて、先手先手と攻め抜いたから勝ったのだ。攻めることが肝心なのだ」
戦いが後手に回った場合、手間が2倍かかり、効果は少ない。先手を打つならば、皆も元気に進んでいけるし、効果は2倍になる。
わずかな差でも、効果・影響はまったく違ってきます。スピードが勝負です。 法華経は、勇猛果敢にすべてに勝ちゆく法則です。
ともあれ、師弟不二の闘魂を燃え上がらせ、異体同心のスクラムで前進するならば、いかなる障魔が競い起ころうとも「『諸余怨敵・皆悉摧滅』の金言むなしかるべからず」(御書1193頁)であります。
我らは妙法の革命児です。学会は学会らしく、鍛錬し抜いた生命力で進んでいくのです。
「師子王の心」で勝つのです。
なかんずく、広布第二幕の勝利を決する青年部の諸君に、私は万感の思いで叫びたい。
君よ、今こそ「法華経の兵法」で立ち上がれ! 不惜の精神で戦おうではないか!
一人一人が、私の分身の青年室長となって、痛快に勝ちまくれ!
法華経に 勝る兵法 これ無しと
縦横無尽に 勝ちゆく人たれ
御書と師弟 法華経の兵法 (2009年3月19日)